テリー・ビッスンの短編集、「ふたりジャネット」。
カバー、というか赤坂図書館の司書のひとの努力だと思うんだけど、「ヒューゴ賞、ネビュラ賞、ローカス賞 受賞!」ってもともと帯に書かれていた宣伝文を背表紙にちっちゃく貼り付けてくれていて、それに引かれて本棚から引っぱりだした。
お疲れ様です。司書の人。やっといてよかったと思いますよ。是非、今後も続けてください。
で、読んでみるとまぁ、面白い面白い。いわゆるSFだと思って身構えるとちょっと肩透かし気味。特に最初に出てくる例の3つの賞をとった「熊が火を発見する」は、なんか微妙なタッチの文体で後から効いてくる感じ。決してSFではありません。
でも、ATMとの押し問答を対話文だけで描いた「アンを押してください」の軽妙な語り口、未来から来たおかしな二人組みと今、ここにいる二人の女性とのやり取りを書いた「未来から来たふたり組」、それに何故だかイギリスが勝手に動き出してアメリカまで航行しちゃう「英国航行中」なんかは、よくもこんなに違う文体がかけるもんだと感心しきり。
「未来...」の中で二人組が未来から表れるシーンで、
「部屋の真ん中で空気が柱みたいにキラキラと輝きはじめ、それから......。でも、『スタートレック』は見たことあるでしょ。」
って、おい。「それから...。」の後はそれか!っていうはしょり方。これだけで十分、クスって笑える。
で、一番、感心したのは、死後の世界を結構、シリアスに描いた「冥界飛行士」。それを体験するのが盲目の画家と言う設定とちょっとぎょっとする新しい展開に驚く。あ~、そうだよなぁ、そうなるよなぁ、って。結末も衝撃的。
でも、きっとこの人の本領発揮は、最後の3部作。これ、サイコーにぶっ飛んでて面白いです。重要な役を演じるのが身長1メートル86センチの中国人、別名、万能中国人「ウィルソン・ウー」と主人公のアーヴのおバカな珍道中といった風合いのある憎めない短編。
最近、笑いに飢えている人はこれだけでも読む価値はある。
このカバーとタイトルに騙されて読んでも損はしません。っていうか、このカバーは正解なのか?ということでUSのアマゾンでこの人の本を検索すると...。
orz。もう、なんか見るのがツライ。なんで、こんなカバーなのかと。イマジネーションって言葉は、無いのかと。
熊が火を発見するからって、そのまんま熊に火を持たせてどうする!
ホント、本のカバーだけは日本人で良かったと思う一瞬。
あじわい的に言うとコニー・ウィリスのこれにも似ている。コニー・ウィリスって人もヒューゴ賞の常連なのね。
1999年のヒューゴ賞受賞作。
テリー・ビッスン興味あるのです。
面白そうですねー。
このシリーズは装丁も奇麗でいいですよね。
投稿情報: CHEEBOW | 2006/10/30 00:07
テリー・ビッスンにすごく興味がわきました。久しぶりに読書しようかな
投稿情報: takao | 2006/10/30 14:54
はじめまして。
ウィルソン・ウーの連作、他にもないかなと思ったですけど、
残念ながらこの3作だけみたいですね。
もっと読みたいなあと思うんですが……。
投稿情報: zasshoku | 2006/10/30 22:18