大多数の親たちはわたしの言葉が理解できないかのような顔でわたしを見返します。さもなければ、「子どもには幸福になってほしいと願っています。」などと答えるのです。
しかし、幸福はゴールではありません。幸福は、目標を達成したときに期せずして手に入れるものです。幸福を人生の目標とした最後の集団はヒッピーですが、彼らは結局幸福を手に入れることはありませんでした。
家族心理学者のジョン・ロズモンドの薄いけどとっても納得できる子育て本。タイトルにしたこのフレーズがグサッと来たので使わせてもらいました。
この人、スゴイのは、冒頭の章で、
かつては単純だったものが複雑になり、かつては比較的簡単だったことが、非常に難しいことに変わったその原因は何なのでしょう?
と疑問を突きつけます。で、回答は、
それは私のような職業の人々、つまり、心理学者、ソーシャルワーカー、子どもの発達の専門家、ファミリーセラピストといった肩書きをもつ人々のせいです。
って、オイオイ、自己否定かよって思いますが、決してそうではない。この人は、家族心理学者ですけど、所謂、「仕組みを研究して、その原因と対処法をひねり出す、あたかも故障した車を直すかのように」的なアプローチを徹底的に排除している。
子どもが悪いことをしたら、理由なんか聞かない。嘘をついたら、「どうして?」なんて絶対に聞かない。悪い事をしたら、罰せられる、それだけを覚えればいい。すっごいシンプル。
これですよ、これ。
もひとつ引用。
わたしはある父親に、十代でしっかりした子どもに成長させるためには、子どもが小さいうちは親の言うことにに絶対的に従わせ、思春期が近づくにつれて、徐々に「自分の考えを持つこと」を許していけばよい、と助言しました。そうすればまず間違いなく、十代になったときに、自分の言葉や行動に適度な抑制がかけられるようになると説明したのです。
するとその父親は、「どうもそういうやりかたは性に合いません」と言いました。
わたしは、あなたの気持ちはどうでもいいんです、と言ってやりたくなりました。大切なのは子どもがどう感じるかなのです。父親にとって何が性に合い、何が合わないかは問題ではありません。
うわ~、これヤバイ。ほんとヤバイ。自分を振り返ってみると冷や汗が。
本としては、200pも無いのであっという間に読めますが、何度も何度も読み返したくなる本です。
アメリカで最近、教育に関連してよく聞く単語、Zero Tolerance の根底にあるのは、こういう考え方なのかもしれない。
ある程度のヒントや対応方法も書いてあるので、参考になるなぁ。買っておこうかなぁ。2006年9月10日発行だから、まだ新しいんですね。子育て本マニアとしては、最近は当たりが多い。うれしい限り。主婦の友社発行か。この人のセミナー聴いてみたいなぁ。呼んでくんないかなぁ。>主婦の友社さん。
ちなみにこの人のWebサイトは、ここ。
追記:
ちなみにタイトルに書いた「何を目標に」のこの本の回答は、「大人に育てあげること」だと書いています。
大人になるためには、親が子どものうちは100%干渉する、良いこと悪いことを問答無用に判らせる、で、それが終わると自分で考えられる・判断出来るようになるように、何時までも干渉せずに自分で行動・判断させる、って感じですかね。
私には子供はいませんが、引用された言葉はとても心に響きました。
是非読んでみたいと思います。
投稿情報: mochola | 2006/10/15 11:18
とても考えさせられました。読んでみたいと思います。
投稿情報: めえ | 2006/10/16 16:18
私も、この本にちょっと興味がわきました。
でも、
>大切なのは子どもがどう感じるかなのです。父親にとって何が性に合い、何が合わないかは問題ではありません。
は、私もまさにそうだと思うのですが、それが、「十代でしっかりした子どもに成長させるためには、…」という考えにうまく結びつきません。
この本を良く読めばわかりますでしょうか、ね?
投稿情報: akira | 2006/10/16 22:57
うん、それはそうですね。確かにここだけ読んでそう納得しろというのは無理がありますね。
この人は、しつけに必要なのは、3つのCだ、と言っていて、Communication、Consequences(罰って意味らしいです)それとConsistency(一貫性)だと言ってます。その中で一番大事なのは・・・・一貫性ではなくてCommunication、つまり伝えることだ、と。一貫性ってなんとなく判るじゃないですか。虫は殺しても良いけど、じゃぁ、何で人間は殺しちゃいけないんだよって。一貫して無いじゃんって。(これ、相当難しい質問ですけどね。)罰も、大事なんだろうけど一番じゃないよねって。
答えは、しつけとはリーダーシップであって、リーダーがちゃんと指示を出せば、子どもは従うんだと。その指示がどんなに理解しがたくてもその人がホントに自分のことを思っていってくれていると言うことが、相手に伝わること、Communication出来ることが最も親にとって大事だと。
最近の親は、そういうちゃんとした指示を出していない、親は子どもに「頼んでいる」だから、言うことを聞かないんだ、ということらしいです。かなり、グサッと来ますねぇ。イタイイタイ。
ま、図書館で借りて読むのが、良いんじゃないでしょうか。僕は、買うつもりですけど。
投稿情報: yasuyuki | 2006/10/16 23:29
Yasuyukiさん、
ぜひ、私も読んでみようと思います。
ありがとうございました。
投稿情報: akira | 2006/10/17 00:10
[いいですね] > ホントに自分のことを思っていってくれていると言うことが、相手に伝わること
これはとても大切なことだと、私も思います。
自分の経験から言うと、ただ叱られ怒鳴られ命令されるだけでは、心には恨みしか残りませんから。
親は愛情を与えてるつもりでも、その気持ちが子供に伝わっていなければ、それはただの自己満足なだけなんですよね。
私も後学のために読んでみようかなと思いました。
投稿情報: michigon | 2006/10/17 12:21