子供は親を選べない。そう、当然のように。だから、こころを冷たくして生き抜いていくしかない。
「私はスギナになったから親もないし、帰る家もない。スギナだから、心もなく、何も感じずに、ただここに生えやがて枯れる。スギナ、スギナ、スギナ。」
親から苛められる子供たちを描いた安達千夏さんの「おはなしの日」という短編集を読んだ。
収録されている3つの話はどれも親に殴られたり蔑まれたり、傷つけられたりしている子供たちだ。
父親にモノを投げつけられたり、ピアノを鉈で叩き割られたり、母親から「あんた、気持ち悪い」と突き放されたり。
子供たちがそれでも懸命に心を無機質にして耐え抜こう、わずかな愛にすがりつこう、という努力が痛いぐらい。
どうして大人ってのはこうも自分勝手なんだろう。
全てがフィクションではないだろうし、少なくともこれぐらいの暴力行為はあり得るだろうと思わせる。読んですっきりするわけでもないけど、じわっと子供たちの切なさと同じ境遇の子供たちを見つめる視線の愛おしさが伝わってきて悲しい。舞台になっているのが作者の出身地、山形を思わせる北国だったり、葡萄の産地だったりして、その自然の描写の豊かさが余計に人間の悲しさを際立たせてるような気がする。
文体が一人称で会話文が「」無しでうまく文中に織り込まれているので、流れるように読める。作者のほかの本を読んでいないので、判断がしかねるけど、これはこれでひとつのスタイルだと思う。わざとらしさが少なくて良い文体です。
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