前に「僕らの事情」、原題「See Ya Simon」というとってもステキなNZの15歳のガキンチョが主人公の本を読んだ。結果的にはBook Shuffleの本となって旅立って行った訳です。あれは最後がスゴくステキな本だった。
あの本の主人公、サイモンは筋ジストロフィーに犯されて最後は死んでしまう。でも今度のこいつは、ちょっと訳が違う。そう、同じ年頃の二人の男の子、バスケが好きなショーンと事故で車椅子生活を余儀なくされちゃったデーヴィッド、が主人公の「リバウンド」。
この本のスゴいところは、「あ〜、このまま行くとこの車椅子のデーヴィッド、(作者に)死なされちゃうのかな」みたいな「泣き系」の伏線が少ししかなくて、デーヴィッドはそれどころか元気イッパイ、きっつ〜いジョーク満載、瞬間湯沸器的に即ギレするキャラで主人公のショーンを完全に喰ってるところ。
そしてデーヴィッドに「おまえも今日一日、車椅子に乗ってみろよ」ってそそのかされてショーンが車椅子を体験する辺りの描写がスゴイ。これは著者が本当に体験したんだと思うしかない。(あ、したんだそうです、はい。)
車椅子に乗っているというだけで、妙にゆっくり話しかけられたり(おれは知恵遅れじゃないんだよ)、後ろから頼みもしないのに車椅子を押されたり(これはベビーカーじゃねーよ)という一般ピープルのみょ〜に気を遣ったというか「同情」てんこもりの反応を鋭く描写している。普通に健常者の自分たちがどういう眼で車椅子の人たちを見てるのか、を剥き出しにしてくれる。
作者がここで伝えたかったメッセージは、「車椅子に乗らないといけなくなっちゃったこと自体は確かに悲劇的だけど、それに適応して生きて行こうとしている人間にず〜〜っと「同情」というか可哀想って言う眼で見るのは止めてくれ」ってことだろう。そりゃ、そうだ。自分が一番悲しんでるのに(なんたってこのデーヴィッドは元は学校ではトロフィーを幾つもゲット出来るぐらいのバスケのスター選手だったのだ)、他人にまで同情される必要はない!もうこっちは折り合いをつけようとしてるのに、なんで他人がキズに塩擦り込んでんだよ!ってことだ。
主人公ショーンの視点で書いてあるけど、デーヴィッドのアツくて真剣な思いが伝わってくる。でも、精一杯カッコつけてもこらえきれずに泣いちゃう時もあるんだよね。そんな時に一緒に泣いてくれるのが友だちさって。
See ya, Simonも相当にいいハナシだったけど、こっちの方が元気を貰えそう。ちなみにリバウンドとは、「シュートしたらボケッと突っ立てないで、直ぐに失敗を取り戻せるようにリバウンドを取りに行け。おまえのシュートが100%入るってんなら、話は別だけど。」というデーヴィッドのコメントから。
要は、なにかやって失敗してもその後でちゃんと取り返せるように準備しろってこと。こういうセリフを事故で下半身不随になっちゃったガキンチョに言わせるというところが作者の巧いところだなぁ。
夜中に読んでてグッと来た。ヤバいね、こういうの。
それにしてもこういう状況に陥ったら、人間は優しくてなよっとした感じにはならなくて、サイモンとかデーヴィッドみたいに徹底的に知的、と言うと聞こえはいいけど、シニカルかつブラックジョークの達人になるんだろう。
ちなみに北米(この物語の舞台はカナダなんだけど)の学校生活でのいわゆる不良との付き合い方、離れ方がすごい難しいらしいのは、良く判った。そう言う部分のリアルさが受けるんだろうな、こっちは実感がないけど。
[いいですね]
ダイエットじゃないリバウンドはこの本だったか…。いいですね。
投稿情報: chubby | 2007/12/15 17:19