ゲド戦記の4巻目。アレンと一緒に闇の力を退治して自分の生まれ育ったゴントに帰ってきたゲド。そこで「こわれた腕環」で助け出したテナーと再会する。
前回の「さいはての島へ」がゲドにとって、アランと一緒に旅をすることでアランを育てる「父親」の話だったとすると「帰還」は、徹底的にテナーが「母親」として悩み、愛し、戦い、そして子供であるテルーを解き放つ話だった。
「こわれた腕環」のなかで「自由の重み」を実感したテナーは、遂にこう考えるようになる。
334p
真の力、真の自由と呼べるものは、物理的な力なんかじゃなくて、信頼のなかにこそ見出されるものかもしれない
最後の方で、テナーはゲドの力を借りてゲドがかつて対峙した闇の力ともう一度、戦うことになる。そしてその戦いに勝つ力を与えてくれたのが、テルーであり、竜だった。
清水真砂子さんの本では、「ゲド戦記のテナーは徹底的に受け身だった」みたいなことが書かれてた記憶があるんだけど、確かにそれはそうだとしても、この中のテナーは「母親」として、そして愛する男を持つ「女」としての葛藤が全面に出ている。それは随所に出てくる独り言でも良く判る。「さいはての島へ」が無口な男たちの独白がメインだったとすると今回は、徹底的に対話する姿がいかにも女性らしい。
しかし最後の戦いの場面でどんだけでもドラマチックに描写出来るのにホントにあっさりと終わらせる。大事なのはそんなところじゃないんだと言わんばかり。それって前に読んだ「始まりの場所」でもそうだったんだけど、ルグインのコダワリ?なのかな。
そして竜のカレシンのカッコいいこと。「ゲド戦記」は竜のカッコよさを見せつけるための寓話なんじゃないかという気がしてきた。やっぱ「ゲド戦記」って邦題はだい〜ぶ誤解を生んでると思うぞ。
さぁ、次はどうなるんだろう?
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