御年79歳!になるクリント・イーストウッドの主演・監督の「Grand Trino」を観た。5/1の1000円の日だったのでさすがに混んでたなー、六本木ヒルズ。
作品そのものは、もうこれで役者としてはおしまいと言っているように、それを暗示(明示?)するかのような終わり方。宣伝文句で「衝撃のラストシーン!」みたいな書かれ方をしてるけど、全然衝撃じゃない。むしろあの終わり方じゃないほうが、衝撃的だと思う。
筋書きとしては、妻に先立たれた頑固で一徹、口が悪くて男っぽいいわゆるジジイが、隣に越して来たアジア系の一家の末っ子と最初はお互いに反発しながら、だんだん打ち解けていく、そして賢くて可愛らしい姉とか従兄弟とか取り巻きのギャングとかとの諍いを通じて友情を深め、最後はその友情のために命をかけて友だちというかもう、息子ですね、そのタオっていう若者を守る、というストーリー。
とりあえず「中西部になんでそんなアジアのジャングルから来てんの、おめーら?」みたいなセリフを言わせて、白人がアジアからの移民に街を奪われちゃうあたりを、黒人との軋轢なんかも入れつつ、描写するのね。で、当然、そこには暴力が出てくる。
スーっていうクリント・イーストウッドの隣に越して来た一家のおねーちゃんが白人の友だちと歩いてる時に黒人3人組に脅されちゃって、あぁ、アブナい!って場面をイーストウッドがトラックですーっとやって来て拳銃チラつかせて取り戻すとことかギャングの一人をボコボコにしてこれまた拳銃で脅すとことか。もう暴力には暴力っていう構図。
結果としてその小さな暴力が次の大きな暴力を呼んで最後は人が死ななきゃ終わんなくなってくる。でも、そこで監督クリント・イーストウッドは、あえて暴力の犠牲になることによってより大きな暴力を抑止する方法を選んだわけだ。そこに至るには、かつて朝鮮戦争で自ら進んで人を殺したことが下敷きになってるわけですね。で、その辛い経験をこの若き友人にさせたくない、でもあのギャングたちを殺さないとこの姉と弟に未来はない、という状況で選んだ方法。それはまぁ、観てくださいな。
ハイライトはなんとなくだけど、タオとだんだん折り合いを付けていく辺りの、音楽で言ったらMajorなメロディーがリズムに乗ってドンドン流れてくるみたいなところが明の部分。クリント・イーストウッドが扮するウォルトがイタリア系の床屋のオヤジとかアイルランド系の土建屋のオヤジとかと毒舌な会話を交わすのをタオにやらせる辺り。この辺はホントにリズム感があってとても楽しい。
でも、自分の息子たちと折り合えない、でも自分の健康もヤバくなって来て、スーをレイプしたギャングたちと対決しなきゃいけない、さぁどうしよう?ってところでちょうど上手く自分の幕引きを理解する辺りが暗の部分。この辺のシーンは影の使い方がとても上手いなぁと思った。そしてホントのラストシーンでGrand Trinoを運転するタオが走り抜ける道と湖のなんともアッケラカンとした明るい風景に救われる気がする。
その最後のシーンに流れてくる「Grand Trino」って曲がハンパ無く美しい。これってiTunes StoreにもAmazonにも入ってないのねー。残念。
そういえば、ウォルトがひたすらタバコを吸うんだけど、最後に「それは演技のためでタバコメーカーからは一切お金は貰ってません」ってクレジットがでてるのが面白い。そこまで書かないとプロダクトプレイスメントだと思われちゃうのかなぁ。世知辛い世の中でございます、はい。
とにかく泣けはしないけど、暴力に対するクリント・イーストウッドの最終的な回答とでも言えばいいのか、その辺のシンミリ感は伝わってきた。良い映画です。
はじめてコメントさせていただきます。
Gran Torinoの主題歌ですが、iTunesで試聴/購入が可能になっております。
私のブログに書かせていただきましたので、お手すきの際にご覧いただければと思います。
http://blog.sowxp.co.jp/ichizo/2009/05/post_393.html
エンドロールで思わず私もぐっときてしまいました。
投稿情報: ichizo | 2009/05/13 17:34
どうもです。
投稿情報: yasuyuki | 2009/05/14 10:30