前から読みたいと思っていた天童荒太さんの「永遠の仔」を読んだ。
ものスゴく重くて恐ろしい物語なのに最後の最後で嵐の後に雲の間から差し込んできた太陽の光みたいな感じで救われる。
具体的かつ客観的に言えば、DVとか父親による娘への性的暴力とかネグレクトがこの登場人物である優希と笙一郎と梁平において起こったことから、全ての物語が始まるわけだ。その3人の過去、1979年と現在、1997年を行き来することで読者にしてみるとパラレルに物語を進めることでその状況が理解出来るという仕組み。
なんかこう、具体的にでも書かないと未だに自分の中で処理できない。過去と現在のパラレルというだけではなくて、実際にはこの3人の経験だけではなくて、そういうヒドい体験を子に強いたその親たちの経験もまるで引き写したかのように重なるところにこの子供への虐待という罪の業の深さを感じる。
最後で3人がバラバラになってから、ともに過ごした病院を訪れる梁平が漏らすこんな言葉で物語が終わるところに救われる。
おれたちは、たったこれだけのことを、ただひとつのことだけを、言いつづけていた。
「生きていても、いいんだよ。おまえは.....生きていても、いいんだ。本当に、生きていても、いいんだよ」
もう一回、いつか読み返したいんだけど、いつになるのか判らない。でもこの悲惨な物語を僅かにでも明るい言葉で終わらせてくれたことで、いつか、またいつかきっと、この痛みを感じながら、生きることを信じる、いや、生きていく強さを思い返したいなぁと思った。
素晴らしい作品だけど、生半可に読むと怪我をしそう。でも最後のこの文章に辿り着くためだけでも、400字詰めの原稿用紙、2,385枚は価値がある。装丁のデザインも素晴らしいと思う。おススメです。
[いいですね] この本、いいんですよねぇ。先が気になる本ってなかなかないんだけど、これは上巻を買って、すぐに下巻を買ったおぼえがあります。
ドラマにもなりましたよね。役者さんも良かったなぁ。
投稿情報: 夢猫 | 2009/05/31 22:57
[いいですね]
重そうなテーマですが興味をそそられました。早速読んでみたいと思います。
ところで表紙の像の作成者は棚田康司氏でしょうか、ふと気になりました。
投稿情報: magnifika | 2009/06/02 00:20