紙になった本というのはどうしても書かれた瞬間(というか正確には校了した瞬間か)から止まったままになってる。だから現在進行形の事態を描こうとするとどうしても「〜現在ではこうでした。この先はこうなるかも?」とならざるを得ない。で、その中からいま進行中の状況をみながら「お!この予想はあってるのかも!」ということを知ったりする。新書ってそういう面白みがある。カシコい著者さんはそういうことは書かない。何故かというと予想が外れるととても恥ずかしくて、自分の主張が信用され無くなっちゃうから。
ということで2011年5月という日付があとがきに残っている例のエジプトの「革命」のことをレポートした新書を読み終えた。「中東民主革命の真実」という本。まつがえた。「中東民衆革命の真実」だった。タイトルとも訂正しました。
実はいまWall Streetで進行中の「Occupy Wall Street」ともつながってるのかな?と思えるのはあとがきにこんなことが書いてあるから。
蛇足かもしれないが、一つ付け加えるならば、その革命はグローバルな本質からアラブの世界の枠を超え、世界各地に伝播しつつある。萌芽形態にすぎないにせよ、日本における原発反対のデモのうねりにすら、その共振の欠片を見いだせるかもしれない。
原発反対のデモがそれかどうかはわからないけど、Wall Streetのアレは確かにそれっぽい。
もとい。本の中身はかつて現地の駐在員だった新聞記者がもう一回エジプトはカイロ、タハリール広場に立ち戻ってどうしてこんなことが起こったのかを自分の眼と耳と脚で確かめた。というレポート。
原因のひとつにFacebookなどのSNSが...という辺りはそれはツールではあったけどそれがメインじゃないと当たり前のことを言ってる。大きいのはグローバリゼーション、そしてそれは無色透明な中立的なものではないし、異文化を受容出来るようなものでもなかったと言ってるのがズシッと来た。アルジャジーラですら、事実を伝えずに煽ってるっていう部分とか。メディアの特性でしょうか?いいえ、同じ穴のなんとかです。
あと「全世界民主化上等!」がマントラのはずのアメリカが今回の「民主化」に向かう革命に対してけっこう及び腰だった理由がこの一文で分かった。なんとなく承知してたけど、ココまでスパ!っと書いてくれるの、素晴らしい。太字参照。
つまり、米国の民主化なるものには「あくまで親米、親イスラエルの範囲内」という暗黙の制約が課せられている。「民主的に反イスラエルを選択する」ことは許されないのだ。しかし、実際にアラブ諸国の民主化を支援した場合、米国はたびたびこの制約を超えてしまうという現実に直面させられた。その経験則は次のような一つの法則にまとめられる。「アラブ世界では、非宗教的な独裁体制下で政治の自由化(民主化)を図ると、草の根活動などで力を蓄えたイスラーム主義勢力が躍進し、そうした勢力は反米、反イスラエル路線へと突き進みかねない危険を持っている」
そらぁ、及び腰にもなりますな。
ということで、今現在のアラブ世界の一部からアメリカの動きを垣間見た気がする。文体も分かりやすいし、なによりもコタツジャーナリスト的に外聞だけを拾って書いてるじゃなくてリアルな言葉が詰まってるということでリアリティがある。オススメです。
最近のコメント