どうして、この人の小説はこんなに短いのにこんなに人間のいやらしさとか欲望とか憎しみとか悲しみを浮き彫りに出来るんだろうか?ということをつくづく考えるというよりも感じさせるなぁ。
「秘密」も「容疑者Xの献身」も良かったけど、「手紙」もイイ。いつも意識的に感情移入しづらくさせていると思うんだけど、今回の主人公はなかなか愛すべき人物だなぁと最初の頃に思わせといてちゃんと落とすところでは落とす。こいつサイテーだぜって。でも作者の徹底した「馴れ合い」の排除振りが、今回はちょっと弱まってるかも。
でもだからといって最後の場面でハッピーエンドにしないところが、徹底している。
だって映画だったら「感動のラスト!一億人が泣いた!」ってコピーがついても不思議じゃないぐらい盛り上がる映像ですよ。それが、たった1ページですよ、描写が。映像ならたっぷり5分は引っ張れるような場面でもその扱い。
でも、その短さに美しさがある。そして最後の最後まで主人公にイイカッコをさせない決意じみたものが伝わってくる。
作者が、そんな美談にはしたかぁねぇんだよって言ってるような気がする。大阪出身なのでこんなべらんめぇ口調じゃないと思うけど。
あいかわらず読んでいて辛くなるけど、その辛さから逃れたいからなのか早く結論を知りたいからなのか、東野圭吾の小説は消費が速いなぁ。350ページがあっという間です。
個人的には、「容疑者Xの献身」の切なさというかやりきれなさに圧倒されてしばらくボーっとしてたことを考えるとちょっと円満で弱いかなぁ。
その分、口当たりがイイとも言えるけど。
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