安達千夏さんの壊れていく家族を描いた「見憶えのある場所」。
実際には、壊れていくのではなくて「壊して再生する」ということだろう。象徴的に出てくるさなぎと蝶のエピソードが良くできている。
単に虐待する母親とその娘、という関係を娘の立場だけではなく母親の視線から視るところが新鮮。娘をどうしても認めたくなくて、苛めて貶して否定しか出来ない母親の姿が悲しい。でも、何もかも否定してしまわないとリセットできないというのは当然の帰結ってことか。
そういう意味では、最後の最後で実家を壊して更地にしようという結末は、その先の明るい未来を感じさせてホッとする。
家を愛そうとして家庭を壊し、家庭を作ろうとして家族を疎外した。
という一行がこの悲劇の中心にいる母親に対する娘の見方なんだろう。前に読んだ「おはなしの日」よりは、救われる。
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