つい最近、「病院の医師たちの働く現場というのがどれだけ過酷なのか」という調査が出たというニュースを見た。
結果は、非常に辛いものらしくいわゆる一般的な他の仕事をしている身からするとある意味、非常識なぐらい。
そういう中で小児科を廃止する総合病院が増えている。なんでかなぁ?と思っているところに図書館で見つけたこんな本。
要は、小児科は他の内科や外科などの言うことを聞いてくれて手間のかからない大人が相手の診療に比べて桁違いの手間がかかる。それに子どもが相手だと大人と比べて使う薬剤の少なく、結果として診療報酬が少ない。つまり、手間がかかる割に売上が少ない。しかも、夜中に駆け込んできてすぐになんとかしてくれ、で、対応が後回しになればなったでクレームは来るは、ひどい時にはすぐに訴訟を起こされる。そういう現場なのだ。
この本は、かつて小児科医であった自分の父親が過労で自殺するという経験をしながらも、自分も小児科医を目指して実際に小児科医として働き始めた千葉智子さんという新人の小児科医と重い病気を抱える娘をもつライター堀切和雅さんの共著ということになっているが、内容は殆どが小児医療に関わる医師たちへのインタビューという形式をとっている。
そのために非常にリアルで生の声が聞こえてくるといういい部分もあるのだが、いかんせんちょっとまとまりが無くて読んでて辛かった。もう少し、問題を整理して、ちゃんとした文章にして欲しかったなぁ。
それぞれの立場の人がインタビューに答えて、それぞれの意見を言うんだけど、結果として病院としては「儲からない」部門、採算の悪い部門。勤務医側からすると単純計算で時給1500円くらいの商売。しかも責任が重い。それでもなんで小児科が持っているかというとやっぱり子供と接することによって救われるという、もう奇跡的なぐらいの「志」に依存している。
冒頭のほうにあった「あなたのこどものいのち、疲れ切った小児科医に任せられますか?」という質問を貰えば、大体の人は、そんなのはやだ!と反発するんだろうけど、じゃあどうしたらいいかという回答は一般の人の中からはそう簡単に出てこない。そこにはいわゆる医療(医学ではなくて)という特殊な業界を理解し、それが自分たちに実は密接に関わっているということを理解することから始まるんだろうと思う。
その上で、夜中でも開いてるから駆け込んでみるコンビニのように小児科を使わないとか親のほうが考えて行動するしか無いんだろう。
この辺も核家族化して自分独りで子供を育てるという現在の異常な子育てに関する状況が顕在しているなぁ。これってもう社会問題だな。
小児科医は大変。それでもやっぱり子供が好きだから、とか子供たちの笑顔に救われるから、という理由で小児科医を目指す人は多いみたいですね。
以前、小児科医に対して行ったアンケートの調査結果を公開していたHPで、やっぱり多くの医師が、当直など夜間勤務のときに訪れる患者の親は「昼間来られないから」だけで時間外に来る、それで待ち時間が長ければそれはそれでまた文句をいう、と答えていたのを思い出しました。
親に対しては「もっと子供の状態を見なさいよ、時間外は重症患者が優先なの」と言いたいし、医師に対しては「そんないい加減な気持ちじゃないよ、急に容態が変わってさほど危険な状態じゃないかもしれないけど素人判断じゃわからないんです、しっかり診てやってください」と言いたい。
それにしても、小児科医はなりたい人が多いみたいだけど、産科の医師は不足状態なんですよね。近くに産院がないからなかなか子供を産むまで踏み切れない、出生率が下がる、さらに産科が減る・・・という悪循環。
なんとかならないかなぁ。
投稿情報: mama | 2007/04/27 23:54
そうですよね。みんな高い志ってーだけじゃなくて、子供って愛おしくなっちゃうんですよね、もう持って産まれたDNAに刻み込まれてるみたいに。
親が駆けこんじゃうってのは、この本にもあるですけど、要は「これぐらいなら大丈夫。氷枕で寝かしといて」とかのアドバイスをしてくれる経験者、いわゆる近所のおばちゃん、おばあちゃんが居なくなったことが大きいと。
おばあちゃんとまではいかなくても中学生ぐらいの子供をもつお母さんは十分に経験者なんだろうから、そういう経験をなんとかご近所の新米お母さんに伝えていければいいのになと思いますね。
投稿情報: yasuyuki | 2007/04/28 06:38