ちょっと間抜けな天使と二枚目気取りの悪魔が結託してドタバタ喜劇風にハルマゲドンを防ぐ。でも実際にそれをやってしまうのは11歳の男の子と近所のガキンチョ連中。それに絡む黙示録の騎士たち、追っ掛けの暴走族、地獄から来た「恐るべき犬」なのにドッグなんて名前を付けられてちっちゃく可愛くなっちゃった犬、セッコ〜い魔女狩りの軍曹と気弱でマジメな二等兵、予言者の子孫のゴスな女性、もう登場人物を見てるだけでどんだけとっ散らかってるのかがわかる。
でも、読みだすと止まらないという「グッド・オーメンズ」。これも金原瑞人さんの翻訳ということで手に取った本だけど、どうしてこの人はこういう面白過ぎる本を見つけてこられるのか?単に向こうで話題になったからというだけではないんだろう。ブラックで、でもニヤとかホロとか連発の絶妙な文体。特に「 」の中のおしゃべりの文体が最高にイケてる。こういう厄介なのは編集者としては任せられるプロにってことなのかな。
気取り屋さんのクロウリーとお間抜けな天使のアジラフェールの掛け合いは、可笑しくて可笑しくて是非、実写で観てみたいという衝動が抑えられない。もしも実写なら、クロウリーは働くオトコ、あ〜、名前が出手こない。あれですあれ。WTCのあの働き者。そう、ニコラス・ケイジ。でもちょっと味濃過ぎかなぁ。そして天使役は、ヒュー・グラントで。クロウリーは「300」でムキムキになっちゃったあの人でもいいかもしれない。そう、Dear Frankieのあの人。
こういう伏線がドンドン出てきてハナシが膨らむだけ膨らんでそれから収束するという構成方法というのは、イギリス人の十八番というか、なんなんだろうなぁ。日本人のハナシではあんまり読んだこと無いんだけど。
天使と悪魔、そしてハルマゲドンという役者と舞台も日本人には非常に縁遠いのでなんともコメントしようがないけど、ここまでひねってブラックなユーモアに出来るのはイギリス人だから、という気がする。ちゃんとアメリカのテレビ伝道師みたいなのもチクッとネタにしてるし。クロウリーが自分で育ててる観葉植物の鉢植えに「こんな風に枯れるとお前たちも捨てられちゃうんだぞ〜!」と植物に恐怖を植え付けるとこは、実際にイギリス人がやってそうでコワイ。
クロウリーのベントレーに付いてるカセットデッキにテープを入れるとどんなのでもクィーンの曲になっちゃうってとこが最高に面白い。こういう小ネタが散りばめられていてたまんない。それに要所要所で出てくる「注」がとっても笑える。
一応、アダムが色々と考えた結果、「こういう風にリセットするのはよくない!」って言うところの気持ちの移り変わりの描写がすごく自然な気がする。説教くさくない。(ネタバレですみません)
そして最後の大団円でタッドフィールドに登場人物が集まってくるくだりが疾走感抜群でおもしろ過ぎ。この部分は電車の中とかで切れ切れに読まない方がイイと思う。この快感はちゃんと味わって欲しいなぁ。
ということで久々のドタバタ喜劇でした。
[いいですね]
金原瑞人さん、ワタシでもその翻訳者名でビビビと来る数少ない人です。
とても気になります。
ついでにこんな本があること、ご存知でしたか?
「翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった」
投稿情報: えみ | 2007/06/20 21:18
あ〜、知らんかった!ちょっとメモしときます。どうもです。
投稿情報: yasuyuki | 2007/06/20 23:09