戦争の悲惨さを戦地の描写だけではなくその後の人生までなが〜く引き延ばして見せてくれたのが、「硫黄島からの手紙」「父親たちの星条旗」だとしたら、もっと短い時間軸でそして狭い面積で起こる悲劇として少年の眼からみた角度で味会わせてくれるのが、今回読んだ「兵士ピースフル」だった。
兵士ピースフル
追記:うは〜〜〜、まつがった!「硫黄島からの手紙」は渡辺謙のやつで、観たのはその前のクリント・イーストウッドの「父親たちの星条旗」だったYO!思いっきりかんつがい。
この良くデザインされた表紙の裏にこんな宣伝文句が書いてある。
ほんのはずみで。戦場に行くことに決めたのだった。
兄のチャーリーと一緒に。
だってぼくらは、いつでも、何でも、分かち合ってきたのだから。
そこは、砲弾が飛び交い、毒ガスがおおいかぶさり、
塹壕と鉄条網に閉ざされた世界だった。
憎むべき相手は、敵だけではなかった。
そして今、六月二十五日午前六時をむかえようとしている・・・・・。
この6/25というのが自分の誕生日じゃなかったらきっと読まなかったかもしれない。でも、読んでみて非常に良く出来た戦争物語、というよりは少年が戦争と言う訳の分からない状況をくぐり抜けて大人になる物語だと思った。
広場で兵士たちが「一緒に戦おう!」と激を飛ばすのを見た主人公、トモが家に帰ってこんなことを言う。
「軍隊が来てたよ、母さん。兵士の募集に。ジミー・パーソンズが入隊した。他にも大勢」
「バカなやつら」とチャーリー。「おれなら行かないよ。絶対に。おれがネズミを撃つのは、かじられるからだ。ウサギを撃つのは、食べるためだ。なぜドイツ人を撃たなきゃならないんだ?ドイツ人に会ったこともないのに」
ホントに殺したいのか判らないのに、その時が来たら殺す。それが兵士の役目、仕事だから。でも、なんで殺さなきゃいけないんだというとってもシンプルなギモンを見せてくれることでこっちに問い掛けているのだなと思う。
サンボマスターの「戦争と僕。」も故郷を離れて戦う兵士の整理出来ない気持ちを歌っていて、この本のストーリーの奥底であの曲が鳴っている感じだった。
こういうのがお金をかけずに映画になって欲しいと思う。戦場の描写は要らないから。もう、血が出たり、足や手が飛んでくのは勘弁して欲しい。
エンディングが清々しくて気に入った。戦争と言う理不尽な環境で生き抜こうとする少年の強い意志が感じられて
ここに希望が持てる感じ。
次の日、連隊はソンムに向かう行軍に出発した。六月の終わり。我が軍は近く大進軍を予定していて、ぼくらの隊はその攻撃の一翼を担うのだそうだ。ドイツ軍をベルリンへ押しもどすのだと。そんな言葉は以前にも聞いた。
最後の一文が苦くていい。
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