コーノさんのフランスの教育に比べて日本のこれはどうよ?という記事を読むちょっと前にいいタイミングでこんな本を読み終わった。
なにかっつーと「フランスで父親になる男たち」の話を日本人女性がかなり冷静に分析しているという本。
これまで、女性、つまり母親の視点のフランス絡みの本はあったけど、これは新鮮だわ。(ちなみに前に書いた記事はこれ。)
どうしても離婚率が高いのに出生率が上がっているか?なんて部分で、女性が主人公になってしまうカンタン分析本が多い中でこれはちゃんと中世からフランス革命、さらには5月革命までちゃんとさかのぼりつつ、男を軸として分析してる。聖書の話も出てくるし。
しかも現代の男性たちのインタビューやら医者、産婦人科などなどいわゆる専門家にもきっちり話を聞いている。前のこれが、ご近所さんネタばかりで、ちょっと食い足らないかった印象があるのでこっちはずいぶんと充実している。
そして話は、男性だけにとどまらずに妻としての女性、そして母親としての女性とのかかわり、最後は子どもとの関わりについてもきちんと考察していて、いや~目からウロコというかジンと来たジンと。
とりあえずそのジンと来た部分を長いけど引用する。7章「「父親学」の現在」、205pから。
赤ん坊が夜泣きする。母親はすぐに夜泣きを止めようとする。当然の反応だ。ナウリによると母親は妊娠の論理に支配されている。つまり、子どもの欲求をすべて、それも即座に満たすという論理だ。この場合、欲求というのは、食欲に代表されるような生物的な本能のことである。
母親は、子どものすべての欲求に即座に応えようとする。胎児は母親の腹の中で、空腹など感じずに、胎盤から直接栄養をもらっていた。その時、母親と胎児の間に「時間」は存在しなかった。子宮の中の時間は永遠の時間だ。そこは永遠の楽園である。
母と子は、いつまでもこの時間の存在しない楽園に住んでいたいと願う。父親はそれを阻む存在なのだ。
この世に生まれ落ちたが最後、胎児は空腹だとか、暑さや寒さだとか、常に何らかの「欠乏感」にさらされる。母親はそれを即座に満たそう、「満たされるまでの待ち時間を消そう」と躍起になる。父親は母親ほどの危機感を持たないから、いつもそこにずれが生じる。母親はしばし、このずれにイライラする。
しかし、このずれこそが大切なのだ、とナウリは父親についての古典的名著『父親のための場所』(1985,スイユ社)から近著『父親と母親』(2004、オディール・ジャコブ社)に至る著作を通して訴える。
時間というのは、死へ向かってまっしぐらに進むものだ。時間感覚の獲得は、死にゆく存在である自らを受け入れる過程でもある。母親は子宮を無限に拡大し、どこまでも子どもを包み込み、保護しようとするが、それは決して子どもの成長にとっては望ましいことではない。
何らかの欠乏の感覚があるから、子どもは泣く。その欠乏の感覚こそが、人間が人間たる所以のもので、欠乏の感覚がある種の緊張をもたらし、ほしいものに手を伸ばす動きを生む。欠乏の感覚があり、待たされる時間があるからこそ、その欠乏が満たされた時、幼児は「自分」を意識する。大袈裟に言えば、それは死を克服し、自分が生きていると感じる瞬間なのである。
おとなでも、欲するものがあり、それを手に入れるために工夫する。そして、それを獲得した時、本当の満足感がある。欠乏感こそが生きている証であり、また生き甲斐を感じる瞬間であり、欲したものと自分の関係性から「個性」というのものも生まれるのだ。
子どもの欲求すべてを即座に満たそうとする過保護の母親は、時間を否定することで死を否定し、父親を否定し、子どもを満足させることと自分の快感をごっちゃにしてしまう。つまり、子どもから、その子が一個の人間として存在する可能性を奪ってしまうのだ。
と、ここまで転記してみて、Zokerさんてのはすげー父親なんじゃないかと思えてきた。
母親は、基本、子供と同化して許す存在。泣けばあやすし、腹が減ったと騒げば即座に対応してくれる。それは自分の体に痛みを感じてさするのと同じぐらいの本能的な仕草であると。対して父親は、もっとも身近な他者として対峙する存在であること。
そして子供が独占したがる母親を横取りして邪魔をするのが仕事だと。それが最初の「邪魔」の第一歩だと。ということで父親だけじゃなくて母親も、ちゃんとその時は父親のほうに「女」として向き合えと。つまり~、ちゃんとセックスしなさいよ、それって自分たちだけじゃなくて子供たちに対しても必要なのよんって。よーはそーゆーことー。
フランスでは、親のベッドルームにはそうそう入れない、というかあそこは子供が入る部屋じゃない、というふうなんだそうな。これは叩き込まれるらしい。こういうのをきっちり言ってくれると分かりやすいよなぁ。
随分前に読んだ斉藤学さんのこの本にも「父親の役目は我慢させること」って一節があって、「あぁ、おんなじだ」と。
ということでフランスの事実婚事情はそれはそれで参考になるんだけど、なによりもそういう社会というかルールを作るにはこんなに時間となんつーの英語的に言うとストラッグル(日本語で苦闘?ちょっとイメージが違うけど)が必要だったんだなと思う。
ちゃんとゲイとかの同性婚の話もカバーされていて、いや、すごい国だわ、フランス。ますます行って住んでみたくなった。いや、それ以前にこれ良い本だわ。
フランスは、パンもワインも美味しいしね。
うちのちびっこ、フランスに行かせようと思ったら、今からフランス語かなぁ。無理だろーなぁー。アート系?う~む。(謎のつぶやき)
最近のコメント