久しぶりにちゃんとした小説を読んだ気がした。小説ってつまり創作の世界であり、ファンタジーである、と。
雰囲気的には恩田陸、なんていうと作者のひとは怒るかも知んない。とてもこれが処女作とは思えないぐらいにしっかり構成されていて世界観が出来上がっている。
これってなんだろうなぁと思い返してみると初めてウィリアム・ギブソンのニューロマンサー3部作で舞台になっているスプロールっていう街というか世界に接した時と同じ感覚だ。
有り得ないとは判っていてもちゃんとリアルにそこにありそうな感覚を覚える、みたいな。
話のスジを書いても意味は無いんだけど、スケキヨと白亜という幼なじみの男女の成長物語とでも言えばいいのか。
「ねえ、スケキヨ」
「何」
「私がいなくなったらどうする?」
「探すよ」
「探しても、探しても見つからなかったら?」
「ねえ、白亜。僕は白亜がいなくなっても決して泣いたりなんかしないよ」
スケキヨが立ち止まる。私を真っ直ぐ見つめる。
「人間は泣いたり怒ったりしたら、その事を忘れてしまうんだ。忘れなくても泣いたりしたらその痛みは確実に薄まっていく。そのために泣くんだ、忘れるために。だから僕は絶対に泣かないよ。そして絶対に諦めたりはしないから安心して」
泣くと言う行為をここまでキチンと対象化して語らせた文章に初めて出会った。
良いファンタジーです。覚えておこう、千早茜さん。
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