「こんな夜更けにバナナかよ」を読んだ。
筋ジストロフィーと戦いながら自立を目指した北海道在住のひとりの中年男がボランティアや病院とか社会のシステムとかとぶつかりながら生き抜いたという物語。単なる「全米が泣いた!」的なお涙頂戴じゃ全く無い。いや、全く無い「戦い」の物語ww
障害者の自立って何?つか自立って何?というかそもそも生きるって何よ?
を剥き出しのココロとカラダで問い続けた男が、回りを引きずり込んで、引きずり込まれたほうもそのデッカイ渦巻きみたいな中で戦いながら自分って何?を発見する物語って言ったほうが正確かもしんない。
とにかく、ワガママなのだ。この鹿野ってオッサンは。題にもなった夜中にいきなり「バナナ食べたい!」って言い出してボランティア起こして剥かせてクチに入れさせて、やっと終わってひと呼吸って時に「もう一本!」って言われてもう怒るのを通り越しちゃったとか「人妻モノのエロビデオ借りてこい!」「ちゃんとパンツおろしてティッシュ持たせろ!」とか。笑えるけどよく考えたら健常者なら普通に自分でやってることが出来ないからボランティアにやらせてるわけ。そういう意味で「障害者だから普通じゃない」「だから聖人みたいに扱わないと!」みたいな見方を根底から覆すエピソード満載。
そしてボランティアとのぶつかりを通してさっきの「生きるってそもそも何?」を問い続けたのね。著者がスゴイ素直だなぁと思うのは、自分が持っている先入観とか偏見みたいなものを曝け出してさらに建前とかウソをも曝け出して自分に対しても「生きるって何?」を問うているところかな。
そして鹿野自身だけではなくボランティアにも同じ問いをぶつけることで鹿野が生きた42年間という時間の意味を問うてみる。
結局、ひとが生きるってなんなんだろう、ね。自分でも判んなくなってきた。
なので一番冒頭の引用されている詩をここでも引用してみる。
きみは選んだのだ
内側から ひそかに
きみ自身を。そして 生きるとは
屈することなく選びつづけること。
死ぬことも含めて。清岡卓行 『四季のスケッチ』より
筋ジストロフィーっていう病気についてある程度知識が得られる、というだけではなくホントに生きるってことを色んな面から考える良い素材って感じ。おススメします。
[this is good] I will refrain from comments.
投稿情報: Ronald Rockwell | 2010/05/02 20:13