ふと図書館で手にとったこの本を読んでちょっと軽い衝撃をうけてる。元々は日経BPさんのWebでの連載みたい。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20070906/134211/
さっくり内容をまとめると
- 如何に中国で日本の漫画やアニメが若者に受け入れられているか?
- どうしてそんなに拡がったのか?
- 国家レベルでの支援はどうなっているのか?
- そもそも反日と日本のアニメ好きは両立するのか?
みたいなのをリサーチというよりフィールドワーク的に足と眼と耳で拾い集めた考察集、とでも言ったほうがいいのかもしれない。
一言でまとめると、海賊版として拡がった日本のコンテンツを政府が放置したことで「日本の漫画、アニメ大好き!」という感情と愛国教育で叩き込まれた「反日」というダブルスタンダードに、著者が呼ぶ中国が持つ「大地のトラウマ」によって、若者が時と場合によっては「反日」に振れてしまうというのが著者の分析結果、なのであった。
「大地のトラウマ」とはなにか?以下、あとがきからの引用。
革命に勝ち、新中国、すなわち中華人民共和国が誕生した後も、この精神土壌はそのまま受け継がれた。非革命的である特定の人を選び出して「標的」とし、その人をいっせいに攻撃する。「声が大きい者が、より革命的」で、声の小さな者は、「非革命的である」として次の「標的」にされる。文化大革命も、このようにいて多くの者がお互いに裏切り、「誠意」や「信頼」を踏みにじっていった。そうしなければ今度は自分が「標的」にされて血祭りにあげられるからだ。
だから誰かが「反革命だ!売国奴だ!」と叫び始めたら、自分は「叫ぶ側」につかなければならない。しかもできるだけ「大声で」叫ばなければならない。そうしなければ、いつ自分が逆に「反革命」あるいは「売国奴」のレッテルを貼られるか、わからないからだ。そのレッテルは中国においては「社会的死刑」を意味する。
こういうDNAに組み込まれていると思わしき表層的な部分と自ら選んで好きになってしまった日本製のアニメや漫画を愛して止まない内面的な部分がキチンと両立してるってことに気がついた。そう、日本人もかなりいろんな矛盾を持ち合わせてる国民だろうと思ったけど、中国人のほうが変な意味でw気合が入ってる。いや、下手したら殺されちゃうんだから。
もうひとつは、この著者さんが政府の高官にインタビューしたという第4章の4節でサラッと「中国はいづれ民主化する」って言い切ってるところ。その前段として「日本のアニメが若者に与える影響に対して危機感を持っているのか?」という質問に「アメリカほど思想性や目的が無いからそんなに危機感は抱いていない」と。アメリカのコンテンツは人権とか民主主義がコンテンツに忍び込んでる、と。
やっぱりアメリカも中国もお互いに仮想敵国なんだなーと思った。コレはマジだ、と。
やっぱりお隣りとは言え、これだけ違うというのをちゃんと意識したほうがイイなぁと。日本鬼子とかで萌えて茶化すのもアリだけど、こういうダブルスタンダードを必然的に持たざるを得ない若者の精神構造を知った上でお付き合いしたほうがお互い生産的だろうなぁというのが読んだ感想。
なんでそんなにアニメ好きなくせに反日すんねん!中国人オカシイやろ!てな人に特にオススメします。
あと、最後に豆知識。8/1は人民解放軍の建軍記念日。6/4は例の天安門事件の日。なので、81というのは人民解放軍の隠語、64は民主化運動の隠語、ってコトらしい。ホントかどうかはわかりませんw 「64」が嫌味になるっていうのはどっかで聞いたことあるんだけどな。
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