日本じゃなく、わざわざサハラ砂漠の端っこのニジェールまで行って、その国をなんとかしよう、そのためには教育が必要だ、学校を作ろう、でもそれを持続させるためにはそこに住む人が自分で考えて動く、学校を運営する、それしかない。そう考えた一人の男の2004年から3年7ヶ月のおハナシです。
冒頭に「フンコイ村のマルヤマちゃん」というニジェールにいかにも居そうな(といってもどういう生活なのか想像は出来ても実感は湧かないけどw)九歳の女の子の日常生活を紹介する章からはじまる。ここをジメっとお涙頂戴にしてないところがまず「むむ!」って思わせる。
それからはニジェールとはどういう国か、なぜ最貧国なのか、どうして教育が受けられないのかなどなどを描いた第一章から最後のエピローグまですごいスピードで読ませられた。というか無駄が無いのだ、文章に。そして要所要所でちゃんと数字とグラフで的確に表現してくれる。
しかも恐ろしいぐらいに冷静に見えるのは、プロジェクトが始まった当初から、仮説を立ててそれを検証する、事実に基づいて計画を立てる、計画を実行するための準備を周到に行う、トラブルを想定して練習する、という手法をブレること無く実践してるからだ。
ただ実際には綿密な計算でも調査でもなく、この著者、原雅裕さんがニジェールの首都、ニアメで偶然出会った世界銀行のワシントン本部からきた一人の黒人中年男性との会話で全てが始まったのだ。それはこんな言葉だ。
「世界銀行はいま、教員や住民代表などで構成される学校運営委員会(COGES)を240校に試験的に設立して、そこに学校運営の権限を委譲させようという計画を進めている」
別にシロウトが聞いたら「ふ〜ん」で終わっちゃいそうな一つの文章。それがニジェールにおいて学校運営委員会(COGES)を中心にして住民が積極的に学校や教育に関わる大きな流れになった。最終的(といってもまだ途中だけど)には1990年代に3000校前後しかなかった小学校が2008年には12000校になり、入学率も2000年の40%から2009年には90%になったのだ。
とにかくどうやったら他の国の予算に頼らずに教育を持続させるか?その一点をひたすら考えて実行する。そのためには既に先行している競合のプロジェクトに負けてはいけないし、ニジェールの政府の了承も取り付けないといけない。そのための様々な工夫と対策がちゃんと実行されてるのが手に取るようにわかる。
エピローグに「星の王子さま」の一節、「たいせつなものは目に見えない」が紹介されていて、お金でもモノでもなく自分たちの力に自信を持って貰いたい、それが一番大切なんだ、というのが紹介されている。サハラ砂漠の端っこでそれを言うなんて出来すぎだけど、ご本人もそう書いてるんだからしょうがない。
しかしこの著者さん、ちっとも自分がやったことを鼻に掛けてない風である。そしてご本家、JICAのHPに行っても大したこと書いてないんだよなぁ。やっと探したらこんなのみつけたよ。
http://www.jica.go.jp/project/niger/6331038E0/01/index.html
なんともあっさりしすぎてよく分からない。ま、HPよりもこの本読んでください。
アフリカとか国際援助とかそういうのに興味がある人よりも、プロジェクトのリーダーをやってるような人が読んだら、ホントに胸が熱くなるコト請け合いなので是非、一読をオススメします。
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