だいたいこういう人間を超越してはるかに進化したエイリアンモノを小説にすると「とりあえず超越してんだからなんでもアリ。全知全能、上等!」っていう風に思考停止になる。しかしそれでいいのか?というギモンを叩きつけた、というか100%著者が感情移入するとこういう自問自答したり、愛を理解したりする、とても愛すべき存在になる、そういう見本のようなSF、「擬態」っていうのを読んだ。
原題は「Camouflage」なので「カムフラージュ」、そのまんまですね。2005年のネビュラ賞を受賞してる。ネビュラ賞に関してはココを参照。すごい作品ばっかりだ。
で、あらすじは海底深くでナゾの物体を発見して、なんとかしてソレとコミュニケーションをとろうとする人間たち、という辺りは「2001年宇宙の旅」と同じ流れだけど、それに関わる二人(2体?)のエイリアン(というか生命体)の過去からのエピソードが螺旋状に絡まって最後の大団円に流れ込むっていう寸法。
でもとにかくこの主人公である<変わり子>が圧倒的に魅力的。冒頭に書いたように「全知全能」ぽくなくて幼くて無知な存在として描いてるところにこの作品の成功の鍵があるような気がする。
だってなんでこうやってカラダを変えられるのか、自分でも分からないって告白するところ辺り、フツウのSFっぽくない。そういう意味でとてもナイスなスイートスポットを突いてる。ターミネーターもこういう味付けにしたら、役者はシュワルツェネッガーじゃなかったかも。
ということで最後の戦いの場面と喜びの場面があっという間に終わるのはあっけなさすぎだけど、それにしてもこの主人公、愛されてるのである。愛され過ぎな存在としてはダン・シモンズの「オリュンポス」「イリアム」に出てくるマーンムートとタメぐらい。
映画にならないかなぁ。とても映画向きだと思うんだけど。
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