新春からけっこう重い本を読んでしまった。ネイティブアメリカンの過去と今を振り返るドキュメント、「アメリカ先住民 あらたな歴史をきざむ民」。書いたのは鎌田遵さん。学生の頃からアメリカでアメリカ先住民のことを研究していたという筋金入りの専門家。
アメリカの人口、3億874万5538人(2011年)のうち292万2248人が先住民。割合でいくと0.9%。そして部族は565部族もあるのね。
著者が様々な部族の人と会い、それぞれの問題や現状をレポートするっていう手法だけど冒頭にも書いてある通り、その部族が抱える社会問題を多角的に捉えて、これからの社会の行く先のヒントを探ろうとする姿勢が素晴らしい。特に収入を得るためにカジノを経営するのではなく、持続可能なエネルギー開発をしようとする部族がカリフォルニアの北部にあったとは初耳だった。9章参照してください。その部族(ピノルヴィル・ポモ)のサイトもあるんだけど、ちょっとなんつーか、素朴っていうか優先度低いっていうか、ちょっとアレwwびっくりしたww
その章以外は、どうにもこうにもアメリカ開拓時代から綿々と続く暗部を先住民の視線から見つめ直す、っていうとカッコイイけど、とにかく黒人奴隷の暗い歴史と同様かそれ以上にひたすら迫害(というか虐殺)され存在を否定される民族だったんだなぁというのが赤裸々に書いてある。
特にニューメキシコのドラッグルートに利用されつくす先住民の話とか今でも進行形の悲劇以外ナニモノでもない。まぁ、先住民の中でもその中に組み込まれてる悪いやつは居ると思うんだけどww
ところで日本の教科書ではエイブラハム・リンカーンって黒人解放の人だと思ってたけど、コレ読むと先住民に対しては徹底的に非情な殺戮のリーダーだったって言うふうにしか思えない。抵抗を続けるダコタ族の1700名を捕虜にして、そのうち男性捕虜38名を1862年12月26日に一日で絞首刑にした。これはアメリカ史上一日に行われた処刑の最高記録なんだそうな。エイブラハム、インディアン、大嫌いだったのね。Wikipediaの最後のほうにもちゃんと載ってるわ。
あとなんとなく知ってた「インディアンが頭の皮を剥ぐ」ってやつ、あれはインディアンがやるんじゃなくてインディアンを殺したという証拠として白人がやってたと。殺してその皮を自治体に持って行くと賞金(1856年の記録で一人殺すと25セント)が貰えたのだ。ワタクシの適当な記憶、マジ恐ろしい。
最後のほうで黒人の公民権運動と比較するコメントが載ってる。
「黒人の公民権運動は、アメリカ市民としての権利を追求するのが目的でした。
いっぽうで先住民の運動は、先住民のままでいたい、とアピールする運動でした。」305p
これ読むといまの中東のアメリカの軍事行動がうまくいかないコトの原点はこの辺にあるのかもしれないと暗澹たる気持ちになる。他人の生活や文化、宗教、慣習を敬うという精神がもともと無いんちゃうか?北米の白人のみなさんは!って。
重い話だけどいろんな角度から個人のエピソードを交えて語られるのでサクサク読める。ワタクシみたいになんとなく知ってるという人がエッセイを読むかのように気軽に読めばイイと思うな。
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