子育てとか介護とかそういう今も目の前にある問題に社会制度的なアプローチとかイロイロあるんでしょうが、建築家が町づくりみたいな観点でゆるく鋭く考えてみるこんな本を読んでみた。「こっそりごっそりまちをかえよう」。
実はたまたま選んだ本が同じ著者さんでびっくりしたんだけど、もう一冊がコレ。「起こらなかった世界についての物語」。著者が選んだ建築家が描いた建てられることのなかった建築予想図を元に書いたエッセイ集。図版をイッパイ眺められると思ったら大間違いで、あくまでもメインは文章なのね。コレ読むと建築家って本当に夢を作るのが仕事なんだなと思える。
「起こらなかった世界についての物語」からこんな文章をば引用。
技術と根気というのは大切だなあ、としみじみ思う。豪胆さと繊細さ、おおらかさと正確さ、単純さと複雑さ、相反する、でも同時に存在しなくてはならないそれらの要素を紡ぎ合わせられるのは、技術と根気の力なのだ。
生きていく上でとても大切な愛とか濃いとかを、学校の授業で教えてくれないのと同じように、建築教育でも建物の愛着、愛想、愛嬌といったものは教えてくれない。けれど、どんなによい建築であろうとも、持ち主や周囲から愛されていないものは、一瞬にして分かってしまうし、その逆もいわずもがなである。だから設計のときは意外なことに「愛」という言葉が結構飛び交うのだ。(すくなくともぼくのまわりでは)。
「こっそりごっそり」のほうにこれからの日本を変えるためのアイデアが詰まってる感じ。浴室をワンルームマンションから無くして共同の浴場に、とかね。東京からクルマを無くしてみたらどうなる?とかすべての建物を1階建てにしてみたら?とか。
街並みが社会を表しているとすれば、今の日本は個別化、孤立化まっしぐらだっていうのがよく分かるけど、それを解決するには政治とか経済じゃなくてもっと、フツウの人の感覚が大事だよねって書いてある。うん、そういう感覚でいいんじゃないかな。統計とか科学的な実験値も大事だけど。
他にも家とか建物を軸にしたステキなアイデアが詰まってる。そしてなによりもイラストが素晴らしい。こういうセンスを建築絡みの本に使えるのって、ステキ。イラストは斉藤弥世さん。
最近のコメント