歴史の教科書を作ろうとした時に「うん?なんでこんなにオレが知ってる内容が入って無いんだろう?ちょっとコレはオカシクない?」と気づいちゃったテキサス在住のアフガニスタン出身の男性、アフガニスタン父とアメリカ母の息子がはたと気付いて書き上げちゃった(かどうかはわかんないけどw)600p超のスゴ本です。
イスラムのにわかファンのワタクシも今までにいろいろ本を読みましたが、ここまで綿密にメソポタミア文明の勃興の辺りから直近の9.11のテロまでをイスラムの側からみた視点で途切れることなく駆け抜けたっていう本は初めてだ。ていうか誰がそんな無謀なことしようと思ったんだろう?
しかも文体が難解な専門書風じゃなくてけっこうぶっちゃけ系なので、意外と読み易い。そんな本を要約するのも大変なのでしませんが、とにかく、イスラムって何?どうやって今の状況になったのか?というのを解説してくれるので、なんかシーア派とかわかんねー、とか、十字軍ってなにしたの?とか、アラビアのロレンスってこういうとこで出てくるのか!とか、もうね、スゴイです。
歴史ってまさにこうやって人と時間が綿々と繋がって出来てるんだなぁと思わせてくれる超力作です。特にイスラームの各派閥が出来る様のオドロオドロシイ状況とか十字軍やらチンギス・ハーンのやったこととか今まで知らなかったこと満載でホントに面白かった。あと、イギリス人の腹黒さっていうか欲の深さっていうか、ホントにこの頃は(イスラームの人にとっては)悪い奴らだったんだなぁってわかる。
ちなみに豆知識だけど、シェークスピアの「オセロー」の副題、「ヴェニスのムーア人」のムーア人はムスリムを指すそうです。なるほどー。でもシェークスピアにはムスリムはほとんど出てこない。それはどうなの?っていう著者の鼻息が聞こえてきそう。
ま、そういう意味ではとてつもなくぶっちゃけてるっていうのは著者個人の見方というか認識がだいぶ混ざってる気がしないでもないけど、ヘンに無味乾燥な事実だけを並べられても「文章」としては価値が下がっちゃったんだろうから、コレはコレで正解です。
一番最後の章にこう書いてある。
イスラーム世界と西洋世界のあいだには、議論すべき問題が山積している。その中には、すぐにも激しい論争に発展しそうな問題もある。けれども、双方が同じ用語を使い、それらの用語で同じことを意味するようになるまではーつまり、双方が同じ観点を共有し、あるいは少なくとも相手がいかなる観点に立っているかを理解するようになるまでは、分別ある議論はできないだろう。多様な世界史の物語をたどることは、こうした展望を開く一助になるには違いない。
本当にそう思う。なによりも勝った側、負けた側、双方の言い分を聴くべきっていうのは正論なんだけど、歴史の場合の問題は、負けた側はたいてい殺されてて記録に残ってないっていう恐ろしい側面なのかも。そういう意味ではイスラームは決して敗けたわけじゃないけど、後から出てきたイギリスなどに如何にコケにされてきたのか?を理解するにはスバラシイ読本です。
ということでけっこう長いし、まぁまぁそう興奮せずにwって言う部分もなきにしもあらずだけど、秋の夜のお供にピッタリな歴史本です。この本の続編、もしくは別の人の意見・観点を読みたい気分。
ちなみに余談だけど、原題の「Destiny Disrupted」は多分にこの映画のタイトル「Girl, Interrupted」から影響されたのかなーと思ってみたり。こっちも良かったよねぇ、アンジェリーナ・ジョリー、最高だった。
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