イスラムのことにもうずっと興味があって調べたり本を読んだりしてるわけですが。
今回読んだのはコレ。「イスラムを生きる人びと」。朝日新聞のカイロ支局の人が書いた本。エッセイといえばいいのか果たしてルポといえばいいのかハッキリ言って分類に困る。なぜかといえば過去の経緯の分析もあるけど、どっちかというと「ナニナニについて知りたかったのでドコドコに行ってダレダレと話をしました。」みたいな情報の塊だから。
そんなわけでカイロの朝のアザーンの風景からだんだん話は混みあったトコロに入ってきてイスラムにおける女性の立場とかムスリム同胞団とかハマスっていうのはナニよ?とか自爆テロっていうのはどうして起こるの?昔と今はナニが違うの?とか。
で、読んでいて思ったのは「あぁ、これはある問題について整理したり、原因を突き止めたりするんじゃなくて、それまでの情報や経緯をできる限り、自分の脚で歩いて人と話してかき集めたまとめ」にほかならないんだなということ。
そういう意味では、滔々と流れる大河のほとりで色んなモノが流れてくるのを見つけるたびにジャブジャブ中に入っていって拾い上げたり、ソコで泳いでいる人のそばまで行って「ねぇ、ねぇ、なんでこんなとこで泳いでるの?」って聞いてみた記録なのかもしれない。
なので、問題は終わってないし、状況もドンドン変わってるだろうし、あくまでもある時期のある場所での観察記録なのだ。なので是非この続編を書いて頂ければと切に願う。
そういう意味では通底する思いというか発見というか、それは結局、「イスラムっていうのは宗教なんだけど、人生そのものだったり生き方だったり街角で垣間見える生活の一部だったりする」っていうことなのかもしれない。
そんな中でもムスリム同胞団とハマスのこと、女性の参政のこと、自爆テロのこと、イスラムでの臓器移植のこと、パレスチナとの関係のこと、なんかは今までの見方からちょっと角度が変わって新鮮だった。
そしてどんなに悲惨な状況でも子どもたちが産まれて育って行けるっていうのは本質的に素晴らしいことだなと思わずにはいられない。勿論、物質的に言えばエジプトとかに比べれば日本なんて遥かに恵まれているけど、なんだろう、この妙に明るい感じのイスラムの人たちの生活っていうのは。宗教がもしも人を助けることがあるとすれば、こういう方法なんだろうなぁ。
「イスラムとは弱いもの、貧しいもの、身寄りのないものを助けることを信者に義務付けている宗教」というのが本当に伝わってくる。勿論、ルールやら戒律が厳しいという側面もあるけど、日本ではそっちばかりが目立つのがちょっと残念。そして最近の自爆テロでも高学歴の若者が自分の命をそれで失ってるんだけど、昔と違って親のほうも「死んじゃあ駄目だ、これはイスラムとして正しくない!」っていう見方が増えているっていうのがホッとする。死んじゃあ駄目だよやっぱり。
イスラムっていうと教義のこととか歴史の経緯とかそっちばっかりで....って遠慮してた人に是非読んでもらいたいです。長いけどオススメします。
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