タイトルに騙されて読んでみたら、実はとっても面白かったというセレンディピティがうまい方向に働いたアタリ本、「犬とぼくの微妙な関係」。犬好きがホンワカするエピソードを書き連ねたエッセイ集、と思うでしょ?
残念でした。中身は「利己的遺伝子」について色んな角度から初心者に解説するという本。実際は人間を含む「動物行動学」を優しく解説してるってことですな。
著者は日本動物行動学会の初代会長さんだ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E9%AB%98%E6%95%8F%E9%9A%86
で、ずっとこの本の中で強調されてるのは、動物は種の保存のために生きてるのではなくて、自分の子供をより多くより強くするためだけに、つまり利己的に自分の遺伝子を生き残らせるためにあらゆる努力をする、そのチカラが遺伝子的に組み込まれている、個の保存のためだけに生きているということ。母性本能とか母性愛なんていうほんわかしたものじゃなくてもっとギラギラした本能なのね。
前に読んだ本の感想、「脳細胞はその乗り物である人体を上手く操って脳の都合の良い解釈をする」っていうのは、よくよく考えるとその脳細胞にそういう自意識の下の領域での操作をさせているのはこの利己的な遺伝子だったのか!と思い当たった。
つまりとにかく死なないように生き抜いて、他人を押し退けてでも自分の遺伝子を残そうとする、そのためには体の色を変えたり、カタチを変えたりするそういういじましい遺伝子の努力の結果として今の社会も生物のピラミッドも形になってるんだなぁということがよく分かる。
途中に出てくる「ネコの教育」という章で、ネコの母親は子供に狩りをするための教育をしているのではなくて、ネコに備わっている狩りをする本能を発揮する機会を作ってるだけだ、というのがすごく示唆的。人間も何かを教えこむという教育が必要なのではなくて、遺伝子的に持っている機能を発揮する機会を作っている、その遺伝子の機能を引き出しやすくしてあげる、そういう考え方が動物のひとつである人間にも必要なのかもしれない。
遺伝子を信用してそれについていく、遺伝子に操られた脳細胞に騙されてみる、そういうほうが動物として自然なんだろうな。
この人が書いた「ネコはどうしてわがままか」も読んでみようかなぁ。
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