「子供を狙え!」ってタイトルは所謂、マーケ指南書のように響くんですが、内容はどちらかというと警告の書、という感じ。
ちゃんとサブタイトルに「キッズ・マーケットの危険な罠」とあるように大人にとってというか企業にとってと言うべきか、ここに手を出すのが如何に魅力的で、だからこそ危険でそして人としての倫理に反することなのかを様々な証言と共に教えてくれる。
しかし、アメリカという国が如何に病んでいるのかよ~~~く分かった。
でも、ちゃんとその中身を分析してこういう風に警告してくれる人がいるというのもさすがアメリカだ、と。
表紙の写真がとても衝撃的(は、言い過ぎか)だったので、最大で置いてみます。(←ごめん、もう出来ないのでテキストでw)
子どもを狙え! キッズ・マーケットの危険な罠きっと日本でもこれを読んで、「あ~~~~、ダメじゃん。言っちゃあ!」って思っている人は大勢居るんだろうと思われ。
折角なので、引用しつつ総括してみよう。
ということに気づいてしまった筆者は、「どうしてそんなにも消費に向かうのか?」というギモンを抱く。もちろん、多様なアメリカ社会だから、アメリカは世界で最も消費志向の強い社会である。どの工業先進国よりも長時間働き、貯蓄率は低い。個人への貸し出しは限界点に達し、およそ150万世帯が毎年自己破産を宣言している。
がいるのも知っている。ま、ナチュラルフードを食べてオーガニックコットンの服を着てる人ってとこか。ところが、「より少なく働き少なく消費し、よりシンプルに生きる、余暇の多い生活、家庭重視の生活、自己重視型の生活といったダウンシフティング派」
ということに気づいてしまう。つまり、「子どもは消費市場を家庭に持ち込む重要なパイプだったのである。」と。「彼らはより少なく働くだけでなく、消費者のライフスタイルを拒絶するが、子供を育てているダウンシフターがほとんどいないのが不思議でならなかった。(略)やがてその理由が分かってくる。子どもを作らないのではなく、子どもがいないからこそ彼らは、ダウンシフターに徹することができたのだった。」
そこで、どうして消費文化の中で子どもが占める重要な役割をしめることになってしまったのかを調査・分析することになる。その結果がこの本なわけだ。
大企業が手を変え品を変え、子どもの市場に様々な仕掛けで「消費しろ!ものを買え!」と迫る様子はマーケティングという仕事に一応は関わっている身からすると鬼気迫る迫力がある。友達を利用したり、学校で広告を流したり、教師を取り込んだり、まぁ、よくもこんなに手法が考えられるなと思う。
リサーチと称して様々な子どもが集められ、一堂に調査が出来るという意味では、学校というのは教師が協力さえすれば、理想的な市場調査 兼 売り込み、刷り込みの場なんだろうな。
子どもに対するマーケティングの目的とは、結局のところ、「親と子どもの間に企業の市場関係者が介入し、親とは関わりのない理想郷を創りあげて、ぬかりなく親と子ども別々に二次元的なメッセージを送り続ける」ことで、結果として子どもが親に「アレを買って!」とおねだりをさせ、親を根負けさせる、ということなのだ。
二次元的なメッセージというのは、要は「親はダサい。クールじゃない。クールなのは、NBAの選手やDJだぜ!」というメッセージを送り、それに乗っかった段階で「で、そのNBAのスターが履いてるスニーカーはこれ。いつも食べてるのはこれ。親に反対されても大丈夫!君の言うことは聞いてくれるよ。」とささやき続けること。
企業側が巧妙なのは、そういう魂胆を見抜かれ、様々な団体から総攻撃を受けたとしても「第一に、企業は子ども能力を向上させているという主張を展開し、第二に、子どもへの広告は健全な企業基盤を維持するのに必要と訴え、最後に、罪は親にある」という意見を展開してその攻撃を避けようとするという点だ。この辺は、消費者団体が強いアメリカ、そして政治家へのロビー活動が盛んなアメリカ、という二面性が見えて面白い。しかし、親と子どもを分離させるようなメッセージングをやり続けながら、「ブランド物を買ってしまう(ジャンクフードを食べさせてしまう)のは親が悪い」という結論に導いてしまうのは、なんともアタマがいいなぁという感じ。この辺は、いかにもアメリカのインテリが考えそうな言い訳。だって、実際にお財布を握っているのは親なんだから。
一番、成功している企業としてNickelodeon(ニコロデオン)が紹介されている。日本語サイトもある。そこのマントラは、
「Kids Rule」(子どもが支配する/決める)という。ターゲットは子ども、しかも「親は関係ないぜ!」って意思が良く伝わる。
最後に119pにある広告代理店のVPのコメントを載せとこう。
「最高の宣伝とは、この商品がなければあなたは敗者だと思い込ませる広告です。(略) こうしたことに子どもは非常に敏感で、敗者扱いされると傷ついてしまいます。だから、もし買わなければ敗者だとあざけられると、いくらかは抵抗しても、子どもはいわれるままにします。広告が子どもの傷つきやすい感情を刺激し、むき出しにしたからです。このように感情的にもろい子どもは、とても扱いやすい存在なのです。」
昔読んだ、「All Marketers are Liar」の逆で「こういうストーリーがあるからこの製品はイイ!」という褒めて買わせる方法もあれば、「このクールな製品を買わないお前はダメ!イケテナイ!そんなんでいいの?」と脅して買わせるって感じか。
ちなみにアメリカの人口は世界の4.5%に過ぎないのにアメリカで売られる玩具は世界の45%なんだそうだ。
つくづく今の時代の、特にアメリカの子どもは大変だと思う。ある意味、下手なスリラーよりも怖い本だった。
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