「フランス人 この奇妙な人たち」っていうアメリカ人が書いたフランス人もしくはフランスそのものに対する愛情溢れる解説本を読んだ。
ということで単にオシャレで天の邪鬼なフランス人というかなり安易は見方がガラガラと崩れ去るのがタノシい発見に満ちている本だった。
だいたい、愛想が悪いとか時間にルーズとかの背景をちゃんと説明してくれてあってそれがイチイチ腑に落ちる。歴史的な流れもローマの頃に遡ってキチンと整理してくれる。というかフランス人自身が歴史をとても意味のあるものと考えているのがよく判る。
しかしフェミな国かと思ってたけど女性に対する地位ってのはごく最近までとてつもなく低かったのがビックリ。
女性の参政権が認められたのが1944年で、1966年までは夫の許可なしに銀行口座を持てなかったとか。ちょっとなにこれって感じ。
あと教育に関しても、名だたる超難関のエコール・ポリテクニーク、通称Xへの受験の話とかホントに日本の受験戦争なんて甘いなと思えてくる。だいたいそういう目安の階級分けがしっかり出来てる国なのだ。あと、数学が出来るヤツが一番上にみられるところの根本は、未だかつて一回しか起こっていない過去をリセットした事例であるところのフランス革命で、貴族とかそういう血筋ではなく人を評価するのに一番判りやすかったのが数学ってのがホントかよって思うけど、あながち間違いでもなさそうだっていう説得力がある。
「フランス人には間違いを犯す権利は認められていない」っていう引用があるんだけど、それ自体がつまり、過去を否定しないというあたりに繋がるのだ。フランス人、オソロシス。
子育ての辺りでフランスとアメリカの違いがかなり明確に述べられていて参考になるので、引用する。
(フランス人の女性人類学者レイモンド・キャロルは、フランスで)親となる人は、フランス社会のルールを守る市民を世に送り出す気持ちで子供を産むと指摘している。従ってフランスの親は、子供に正しい振る舞い方、ふさわしい目標に向かって努力することを教えなければならないと信じている。子供を、親もフランスも誇りにできるような人間にし、親子ともフランスのシステムの中で快適に生きることができるようにするためである。(中略)
フランスの子供は「自立しなさい」とは言われない。お金持ちになるのが究極の成功であると暗示されることも無いし、幸せを追求せよとか努力すればなんにでもなれるなどと励まされることもない。(中略)
フランスは個性的な人間をたくさん出してきた国だが、学校ではどのように考えるかより知識を蓄えることを学ぶ。「私の考えでは....」で始まるような期末レポートは、まずいい点が貰えない。
対してアメリカの話では、
アメリカの親は、子供がどのような人間になるか分からないと思っている。彼らの親としての任務は、子供ができるだけ潜在能力を発揮出来るようにすることだ。彼らは子供のとの「契約」に基づいて育てるのだから、どう育てようが他人に干渉される筋合いはないと思っている。一人前になれば独り立ちするのが当たり前で、家族に縛られることはない。むしろ、大学を出てからも親と一緒に住むのはおかしいと思われている。子供は自信を持って人生と言う戦いに挑む。意志があれば、そして努力すれば何ごとも可能であると信じて。
そして園芸に例えて、
この辺の話を読むと日本はどちらかというとアメリカ的な発想なんだなと思えてくる。歴史的な見方からしたら、フランスに近いのに。フランス人の親は、どのような植物になるか分かっていて種を植える。どのくらい水をやり、光を当てて、肥料を与え、剪定し、接ぎ木し、移植すれば、期待通りのものになるか知ってるのだ。
一方、アメリカ人の親は、植えた種がどのような植物に成長するのか検討が憑かない。自分たちの姿を見て子供が学んでくれればいいと思っている。抑えつけたり厳しくしつけ過ぎると、子供の個性を摘んでしまいかねないと考える。子供はひょっとすると大統領になるかもしれないのである。だから、親は子供の自己表現を奨励する。何になるか分からないので、水も肥料もあてずっぽうでやらざるをえない。ときには曲がって育つこともあるが、自分たちのやり方が正しいと信じて結果を見守るしか無いのである。
ということで実際にフランスでの仕事のコツとかディナーパーティーに呼ばれたらどうするかとか呼んでもらうためにはどうするか?みたいな赴任する人にとってはありがたい話もあるので、とりあえずフランスに興味がある人は読んだほうがイイ。眼からウロコが落ちます。
おススメ。
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