Peter Cameronというひとが書いた原題「The city of your final destination」、邦題だと「最終目的地」という小説を読んだ。もうちょっとなんとかならんか!みたいな身もフタもないタイトルだけど、読んでみたらまぁ、そうだよねと言うしか無い。
http://www.amazon.co.jp/dp/4105900757
感想文を書こうと思って色々考えてるんだけど、やっぱり小説の感想文というのは書き辛い。話のスジを紹介すれば確かに自分のメモとしてはいいんだろうけど、読んだあとに残っているなんとも言えないこの感覚を現せない。
とにかくオマーというあんまりイケていないイラン出身の大学生がウルグアイの片田舎に伝記を書こうとして行くのね。で、そこには自殺してしまった小説家の妻と愛人とその娘、兄、兄の恋人のタイのゲイ青年が住んでいる。彼らに会って公認を貰わないと大学から出てる補助金を使えない。ということでオマーはそれを貰いにウルグアイまで飛んでいくのだ。カンザスのこれまた片田舎から。で、ウルグアイで色々有りながらも、なんとか公認をもらうんだけど、まぁ、色々あるんですな。その色々っていうのが当たり前だけど、「恋に落ちる」ってやつ。それをこの作者はスゴく丁寧に描写する。そこが結果として味わい深い赤ワインを飲んだ時のような説明出来ない、でも美味しいというか快感としか言えないような感覚を引き起こすのだ。
途中まではなんともゆるゆるな感じで話が進むんだけど、スゴイのが視点(というか文章の主体)が主人公のオマーから、小説家の妻のキャロライン、兄のアダム、アダムの恋人のピーター、小説家の愛人だったアーデン、までクルクル換わるところ。
あるところまでオマーの一人称で書いてても突然、キャロラインの目線で書き始める。という手法?なのかなぁ、それがすごく自然に出来ていて、登場人物の感情がとても判りやすいこと。
そして最後の最後でそれぞれの登場人物がそれぞれの「最終目的地」に辿り着いて、ふとした偶然からそれを謎解きのように解き明かす、というくだりは、この小説の結末の書かれ方としてとても相応しいように思う。こういう物語りの技法そのものが小説というモノの無限の可能性を教えてくれている。
物語りの最後に「本の奥付」に書かれているとある記述で謎がさぁ〜っと解ける辺りの快感は、前に観た「善き人のためのソナタ」のこれまた一番最後のシーン、本屋で本を買う主人公が店員に「贈りものですか?それとも自分用?」と訊かれて「For me」って答える辺りを思い出しちゃってもう鳥肌もんです。
440ページもあって長いんだけど、意外とサクッと読める。久しぶりに良い小説だった。おススメ。
(しかしVoxのAmazonから引っ張ってるのが直んないなぁ。)
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