帯の「ぬかどこ」がどうのっていうのを読んでから、読み始めると前半の展開がまるでホラーコメディみたいに感じられるんだけど、後半に差し掛かると「あぁ、これはファンタジーとしてなかなかじゃないか!」と思ってしまう梨木香歩さんの「沼地のある森を抜けて」を読んだ。
ぬかどこから卵が産まれてそこから人が出てくるという設定がまずユニークだし、突拍子もないんだけど、ジメジメした湿っぽさを突き抜けるようなドライな文体が心地良い。独身女性が語る「家族」とか「故郷」とか「結婚」とかいうなんかリアリティが有り過ぎるネタ満載なのに。なんでこういうカラッとした文章になるんだろう?っていうくらい。
そして主人公と一緒に活動する脇役が男性でも女性でもない無性な、いわばオネェな同僚という辺りも客観的に考えるととても不思議なんだけど、終わってみればすごく意味の有る筋書きだったのだと納得出来る。生きるっていうことの意味を妙に考えさせられる不思議なファンタジー。でも、こういうのって梨木香歩さんのファンじゃなきゃ、読まないよなぁ。しかし日本語以外ではなかなか説明が出来ない感がスゴ過ぎる。
それと装丁がすごく素敵。いい仕事してます。
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