前に書いた「散るぞ悲しき」に関する記事は硫黄島の激戦の指揮官、栗林忠道中将の話だったんだけど、それをもっと別の角度から、つまりあれに関わっていた別の人間に注目して調査したのが「写真の裏の真実 硫黄島の暗号兵サカイタイゾーの選択」。
散るぞ悲しきがあくまでも栗林中将に注目してその悲劇とあの短歌に込められた思いを丁寧に拾い上げてるのに対して、これは生きて捕虜となった暗号兵の思いとアメリカとの関わりを地味に調査したドキュメンタリー。ただ書いたのがテレビ局のディレクターさんなので多分にテレビのドキュメンタリーっぽい。つまり間をもたせ過ぎというかもったいぶってる。だいたい発端が1枚の写真なんだから推して知るべきか。
これ読んで思ったのは、内容的なことよりもテレビ向けに制作されたコンテンツは決められた時間枠に収めるっていうのが至上命令なわけでそこから漏れちゃう情報や感情、思いみたいなものをこういう形で外に出すっていうのはアリなんだなということ。
ある程度調査してもまだ納得できないのに、放送の日時が迫ってきて本人的には中途半端な内容で流さないといけない、でもその後も調査を進めてやっと納得できるコンテンツになった、それを書籍にまとめる。こういうのってそのコンテンツ、この場合は1枚の写真をキッカケに硫黄島を生き残った兵士がどうしてアメリカに協力するようになったのか?を時間を掛けて解きほぐすことなんだけど、それにはぴったりなスタイルだなと思う。
栗林中将の「散るぞ悲しき」と一緒に読むのをオススメします。あの悲劇の戦場でもこうやって人間が生きていたのだな、あの地獄を背負って生き延びた人間がいた、と感じる。そして彼のもたらした情報はその後の日本の行く末に何らかの影響力を果たした、のかもしれない。それだけでも「戦争」という悲劇が厚みと奥行、というかリアルな「モノ」のように胸に迫ってくる。
これも次のスゴ本オフ「戦争」の回に持って行きたくなるなぁ。以下、参考書籍ね。
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