いやぁ~、大都会東京に住んでるみんな!元気?ところで限界集落なんて、全く知らないどっかの片田舎のじいさんばあさんの話だと思ってるでしょ?違う違う。この本読んでみろって。
限界集落の真実: 過疎の村は消えるか? (ちくま新書)とあるきっかけでこの本に惹かれて読んでみた。表紙にある問いかけ、「過疎の村は消えるか?」っていうのを検証するのはホントに最初の方だけで後の方は、我々日本人の目の前にある危機っていうのはなんなのか?を歴史の振り返りとフィールドワークで丁寧に辿る素晴らしいルポルタージュというか提案というかそういうもの。冷静なのにアツい本。
単純に書くと「限界集落っていうのは田舎だけの問題じゃなくて過去の日本が辿ってきた歴史を考えれば必然の結果で、それでも「消滅」なんて結果には至ってない。で、それを解消しようとして介護とか老人福祉みたいな狭い視野で問題を捉えるとエラいことになるよ」というのを教えてくれる。
つまり、いまの限界集落と言われる地域に残っている高齢者のことよりも少子化で若い世代が育たないほうがずっと深刻なんだ、っていうこと。結局、ソコでの少子化が大問題ってことなのよ、うん。
ちょっと引用すると、
集落の限界問題はこうして、世代間の地域住み分けがなされた上で、高齢による担い手の喪失が予想される地域の中で、2010年代以降、いかにして次世代への地域継承が実現されるかという問題として設定される。
こうして限界集落問題は、高齢者が多いゆえにそのサポートが必要だと論じるのでは不十分なのであり、むしろ日本社会の戦後の変動の中で生じた、主要三世代の間に特徴的に見られる村落と都市の、低次産業と高次産業の、あるいは中央と地方の間の、極端な住み分けからくる矛盾のうちに考えるべきものなのである。
過疎問題は世代間の地域継承問題である。それは一人一人の人生の問題でもあるとともに、人口構造の問題でもあり、それを生み出してきた経済や政治の問題でもある。そしえそれはおそらく、この国に支配的な思想や倫理、日本人が今後どういう生き方をするのか、何を大事に思い、何を尊重するのか、そういった価値の問題にもつながっている。
もう繰り返し、クドいぐらいに「狭い地域の高齢者対策の問題じゃない」って書いてある。そしてそれを支える様々なデータと自分の足で歩いて得た知見。で、問題は都市に暮らす我々にも跳ね返ってくるんだよね。
ちゃんと都市こそ分断されていて個人が孤立しやすい場所だ、って言い切ってて、それは都市生活者の自分にもズシッとくる鋭い言葉だったりするのだ。
高等教育を受け、どこにでも振り分け可能な上に、広域移動にも慣れた労働力で、都市的雇用にほぼ回収され、仲間と集い、集団組織をつくるのに慣れていない。中央集権、経済中心の考え方から離れることも難しく、それどころか、そこかあうまみを吸い取ることにも不器用だ。景気悪化の中で不安定な仕事についている者も多く、自分のことだけで手一杯で、未来の見通しも明るくない。
限界集落と呼ばれる場所以上に、いま都市でこの日本社会を動かしている中心層でこそ、その主体性を取り戻す必要があるかもしれないわけだ。
そうですね、ホントに。で、結局、最後はそれぞれの地方に人が帰っていくための新しい発想をしないとダメだよね、そのためには都会で考えるんじゃなくて地方に住んでる人たちが主体となって雇用とか医療とか子育てのしやすさとかそういう部分でアイデアを出さないといけない。そのためにひとつの方法論、「T型集落点検」を試してみようって提案してる。
T型集落点検についてはココが参考になるかも。http://yori1335.blog89.fc2.com/blog-entry-44.html
ということで個人的には親がもう死んじゃって居ないので帰るべき田舎ってものが無くなちゃったワタクシですが、実家がある人は、帰るとしたらどういう条件が必要か?どうやったら仕事がソコに作れるか?なんてことをこれをきっかけに考えてみるのもいいのかもしれない。
久しぶりに色々発見があって刺激的な新書でした。オススメします。
追記:思ったんだけど、この本の著者の山下さんと少子化の記事の元の本を書いた金子勇先生で、世代継承をしながら少子化をなんとかするにはこうしたらイイんじゃない?的なアイデアがカタチになるといいのになと思ってみたり。
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