自閉症の我が子を癒すために馬と出会い、それからシャーマンと出会って、勢い余ってモンゴルまで行ってしまったジャーナリストの文字通りジャーニー、旅を記録したノンフィクション。サブタイトルが「わが子を癒したモンゴル馬上の旅」っていうんだからホントにそのものです。編集者の努力が現れてますね。それと表紙の写真が素晴らしい。
ちょっと前から精神の病を治すために馬を使ったセラピーっていうのに注目してて、ちょうどその興味にズバリと当てはまったので読んでみた。実際に読んでみると紀行文であり同時にモンゴルの過去の歴史(ジンギス・カンやソビエトに支配されてたころのエピソード)も出てくるし、シャーマンっていうスピリチュアルな行いをする癒しの専門家?も出てくるし、ひとくくりにはしづらい内容なんだけど、軽めの文体でスイスイ読める。
自閉症でものすごいかんしゃくやら発作を起こすトイレトレーニングが出来てない息子、ローワンと健常者とのスレ違いなんていうのも出てくるけど、基本はモンゴルの草原を移動しながら、シャーマンに会いに行く、その中で両親とローワン、現地で知り合ったガイドやシャーマンと触れ合っていく過程がすごく生々しい。なのにとても軽いというか清々しい文章なのが不思議。あとどうしてこんなに動物とココロが通い合うのか、自閉症っていうのはそういうモノなのかちょっと不思議ではある。
映画にもなってるのでトレーラー見ると雰囲気が伝わるかも。
http://horseboymovie.com/Film.php
読んでみると予想通りにちゃんと息子が変わっていってほっこりするんだけど、最後のエピローグに出てくるこんな文章がなんかしっくりきた。
自閉症を追い出すという意味で「治癒する」というのは、いまのぼくにいわせれば完全にまちがっていると思われる。彼がふたつの世界に片足づつかけて、二つの世界を行ったり来たりしてもいいではないか。ごくふつうの人たちの中にも、そのようにしている人は大勢いる。アメリカに移民してきた人々のことを思えばいい。彼らは片足を故郷の言葉と文化にかけ、もう片方の足を西洋世界にかけ、二つの世界を行き来しているではないか。そういう場にいられるというのは、とても豊かな気がする。
つまり自閉症だからといって拒絶するのではなく多様性として受け入れよう、そのほうがずっと世界が豊かになるよ、ということを教えてくれてる気がする。セクシュアルマイノリティの話でも同じだよね。
ということで次回のスゴ本オフ、「親子」の会に持って行きたくなったオススメ本でした。モンゴルにも行ってみたくなった。そういえば昔、旅行博かなんかでモンゴルのことを説明されて、「モンゴルって何が有るんですか?」って聞いたら、「いや、モンゴルには何も無いんですよ、だからこそ良いんですよ!」って教えられて、あぁ、なるほど!って思ったけど、馬と草原とシャーマンがあるんならすげえ豊かなトコロじゃんって思ったよ。
あと馬を使ったセラピーと言う意味ではここの組織をもうちょっと調べてみようかな。
1/27にこれまでのスゴ本オフに参加して頂いた皆さん(の一部の人たち)をお招きしてささやかな新年会をやるんですけど。(もう締め切っちゃったので行けない人にはごめんなさい)
過去にご協力頂いた新潮社さんから素敵なレアモノノベルティを箱で頂きました。参加する皆さんに配りますね。ちなみに新潮社さんシバリのスゴ本オフはこんなでした。もうすぐ1年かぁ。
http://yasuyukima.typepad.jp/blog/2012/03/sugohon_off_2012_03_16.html
ダインさんの記事はこっち。新潮社さんの本、集まりすぎだろwww
http://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2012/03/160-f32c.html
中身はこんな感じ。
書店の新規開店の時にしか配らないYonda?のエプロンとか原稿用紙とか。
なんかレアモノの内田春菊さんオリジナルなティッシュも2個だけ入ってるぞ。
これがエプロンね。2枚しかありません。
文庫そっくりのノート。ちゃんと紐もついててオサレ。
何故か蟹工船のCDも。激レアだそうですww 隣にあるのは今年のカレンダーですね。
ということで1/27の新年会に参加するスゴ本オフ好きな皆様は期待してお待ちあれ。
これはたまらん。ネコがご飯をそぉっと奪い合ってる動画。なんか静かなのにけっこう早業でクスクス笑っちゃうw
次回のスゴ本オフが決まりました。スゴ本オフとは「わたしの知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」という書評ブログを書いているダインさんと一緒に不定期でやっているオフ会です。最近、Facebookでグループに参加してくれた人が200名ぐらいいるので、ちょっと丁寧に説明します。
一番最近やったのはコレ、「食とエロ」のスゴ本オフ。ダインさんの記事はコレ。私の記事はコレ。
スゴ本オフは、テーマに沿って「ワタシがオススメのスゴ本はこれだ!」というのを持ち寄ってそれぞれが紹介する、というただそれだけのオフ会です。ビブリオバトルのように勝ち負けも決めませんし、厳密なジャンル設定もありません。各自がオススメのスゴ本を5分程度で紹介してもらいます。最後には持ち寄った本を参加者でシャッフルして持ち帰ります。差し上げられない稀少本、ワケアリ本等の場合は紹介だけでもOKです。持ち込んだ食べ物やお酒、お茶にデザートなどを頂きながらゆるゆるやります。
テーマは毎回様々です。過去には「SFのスゴ本」「ホラーのスゴ本」「戦争のスゴ本」「女と男のスゴ本」という形式のものもあれば、「早川書房のスゴ本」のように出版社シバリの時もあります。選ぶ本は今回のテーマであれば「これは私的に『親子』のスゴ本だ!」という参加される方の主観で決めてもらってけっこうです。こんな本はダメかなぁ?と迷ってる暇があれば持ってきて紹介してください。冊数に制限はありませんが、あくまで常識の範囲でお願いします。
では、次回の概要をば。
日時:2013年2月23日(土曜日) 14 12 時開始~19時終了予定 (訂正:12時じゃなくて14時開始です!)
場所:KDDIウェブコミュニケーションズ株式会社(最寄りの駅は半蔵門もしくは麹町です)の会議室(6F)
地図はココ。麹町学園女子高の隣の住友不動産のビルの6Fです。
テーマ:今回は「親子」に関するスゴ本がテーマです。オススメの本、新書、マンガ、雑誌、DVD、CDもなんでもアリです。毎回、参加人数以上の本が集まりますので、自分があまり読んだことのないジャンルや作家さんのスゴイ本と出会うことが出来るというのが一番の良さかもしれません。もちろん、他の人の紹介を聞いたりするだけでも楽しいですよ。
定員は30名、参加費は2千円です。軽食とお酒、ソフトドリンクなどをお出しします。アップルパイを焼いたから持っていきます!とかお団子が田舎から届いたのでお分けします!とか近所のすっごく美味しいフランスパンを買っていきます!などは大歓迎です。材料費や買った品物の代金は数千円レベルであればちゃんと精算します。あんまり高いものはダメですw
参加申し込みはFacebookの以下のリンクからどうぞ。
http://www.facebook.com/events/301531259968605/
Facebookのアカウントがない人はこの際作るか(笑)、Twitterで@yasuyukimaにMentionしてください。
ではよろしくどうぞ。
新年早々、すごい本を連続で読んでしまった。あ、あけましておめでとうございます。今年もゆるゆると感想文ブログをよろしくお願いします。
ということで2013年のしょっぱなから何がスゴかったのか?というとこの2冊。最初はコレ。「サイバラバード・デイズ」。西原理恵子さんの呑んだくれ日記じゃないよ。未来のインドが舞台のSF連作集だよ。
で、次に読んだのがコレ。「ぼくと1ルピーの神様」。大ヒットした「スラムドッグ・ミリオネア」の原作。映画も観てないので丁度よかったかも。
AIやらロボットやら遺伝子改造人間が跋扈するSFとちょっとグロいけどドキドキで最後に心温まる系のフィクションがどっちも舞台がインドだったというのが何かこう、シンクロしちゃったわけです。全然毛色が違うのに実はベースとなってる背景、やたらと貧困でやたらと搾取されてて貧富の差がとてつもなくて、女性はレイプやら人身売買でエライことになってる、と。
SFのほうを書いたのはアイルランド人で、スラムドッグのほうはインド人の外交官。でも見えてる風景がおんなじ。それぐらいにカーストは強烈だし、街はキッタナイし結婚っていうシステムも未来になっても強烈に残ってるし、近隣の国と争ってるのもおんなじ。そんなリアルさにやり切れなさというか、諦めみたいなものがある。そういうのをフィクションとは言えどもチャラに出来ないぐらいに強いってことなのかも。でもそれを突き抜けるぐらいに物語として良く出来てて面白い。ていうかその現状があるからこそ、こういう物語が作られるんだな、きっと。
なんでもかんでもでっち上げればイイっていうものじゃないっていうのがよく分かる。リアリティをベースにしてファンタジーを作るとこうなるっていう良い見本。ホントかどうかはインド行ったこと無いから分かんないけどw
ところで、「ぼくと1ルピー」のほうは男性同士の、というか大人の男性が未成年の男性を襲う、女性に暴力をふるうっていうのがバシバシ出てくるんだけど、こんなにもインドの成人男性っていうのはスゴイものなのかな?こんなところに女性が一人で旅行とかしてたらエラいことになっちゃうよねってオモタ。例のバスでのレイブ殺人の騒動を同時進行でみてるとあまりにシンクロしてて実にオソロシイです。
これ、未読の人は2冊連続で読むととてもおもしろいと思います。オススメ。インドのファンタジーの現在と未来を同時に味わえてとってもお得。
この年末年始に読もうと思ってとっといたのになんかスゴイ気分的に読むのが辛い。
そうです、これです、「白い闇」を書いたジョゼ・サラマーゴの「複製された男」。
冒頭のこんな文章がカッコいいのに。
現在の状況を正確な医学用語で言えば、一般的にうつ状態として知られる一時的な精神の衰弱に悩まされていた。その状態を明確にするには、かつて結婚していたが、なぜ結婚することになったのか覚えておらず、離婚したが今は別れた原因さえ思い出したくないと言えばそれで十分だった。
一緒に聴いてたこれがダメなのかな。スマッシング・パンプキンズの名盤。
とりあえずがんばろう>じぶん。
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